コミュニティに飛び込む

オンラインサロンやファンクラブなどのコミュニティサービスが流行っている。インターネットをうまく使いこなし、ひとりでは到達できない地点を人々は目指し始めている。同時に強烈なアイデンティティを欲している。

アイデンティティの和訳は「自分は何者であるか」だ。これを求めて人はあちこち迷う。ともすると一生かかる場合もある。よくインドに行く。見つけたと思ってもすぐにまたわからなくなる。

探すのはとても大切なことだが、厄介なことに1人でいるときは自分の悪いところばかり目に付く。ひとは成長するためにそのようにできているものらしい。だから些細な変化も褒めてくれる親が、師匠が、パートナーが必要なのである。

他者と接したとき、ひとははじめて自分を理解する。良いところもそうでないところもわかる。新しいコミュニティに所属したときそれはもっとも顕著になる。学校に入学したとき、会社に入ったとき、結婚したとき、それぞれのタイミングで新しい自分と出会う。ひとがみんな違うようにできているのはそのためだ。金子みすゞが『私と小鳥と鈴と』の中でいった「みんな違ってみんないい」は、コミュニティの在り方と一緒に学ぶ必要がある。教科書の音読だけではおよそ伝わりきらない。

 所属するコミュニティは多い方がいいが人間が良好な関係を築ける人数には限界がある。いろいろ探してみるのがいい。居心地のいいところ、あえて悪いところを選んでみるのも手かもしれない。コミュニティサービスはそれを可能にする。

うまくなると次第に自分で自分自身を褒められるようになる。自分が何者かを理解し、与えられた役割を果たせるようになる。それでも自分の背中を自分で見ることはできない。独立した人間にとってもコミュニティは大切なのである。

自分の中に答えはない。答えは他者の中にある。