地上の星だらけ

仕事柄、地方を訪ねることが多い。講演とかで行くわけではないから、会うのは地元で暮らし、その土地に様々な感情を持ち、毎日を過ごすいわゆる普通の人たちだ。

そのなかには本当に素朴で堅実で実直に、かけがえのない日々を送る人たちがいる。彼らこそ地上の星と呼ぶにふさわしい。

残念なことに地上の星は周りからの評価が高いとは限らない。ある意味でその実直さが周りから疎ましく思われ敬遠されることがある。周りのことを思っての行動が受け入れられないことほど悲しいことはない。

間違いなく中央でもやっていける人が、やむを得ない理由があって地方で暮らしている様をいくつも見てきた。なにかをあきらめて地域やコミュニティを守ることを決めた人の目には言い表せない深みがある。

地上にある星を誰も覚えていないと言ったのは中島みゆきである。地上の星が散らばるこの国を見つめるのは燕ではなく地に足をつけて歩く人間であるべきだ。文字通り、地上には山ほど星がいる。彼らを見過ごす人生ほどつまらないものはない。