受験は差し馬で

競馬の勝ちパターン(馬券の買い方ではなく馬の着順の話)には「逃げ」「先行」「差し」「追込」があると言われる。脚質って呼ばれることの方が多いかな。個人的に一番かっこいいのが「差し」だと思っていて、ゴール前ギリギリで勝ちに行く感じが博打の真髄っぽくて好きだ。

受験もレースに例えられる。一年生から優秀で、学年トップを維持し続ける人。ある瞬間から勉強に打ち込み、みるみる成績上位に食い込む人。それぞれ競馬でいうと「逃げ」と「追込」っぽい。そして思うのは「受験は差し馬になれ」ということ。最初から勉強を張り切りすぎるとスタミナ切れするし、土壇場で頑張るにはものすごいエネルギーがいる。自分が持っている実力を最大限引き出し、最小の力で最大の結果を出すには差し馬になるしかない。

すこし前のJRA(日本中央競馬会)のCMで、グラスワンダーという差し馬を紹介するナレーションがある。
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標的はただ一頭、同期のダービー馬だった。

今行くか。いや、まだか。いや、今か。

一瞬の判断で未来を変えた、未知なる栗毛。その馬の名は…
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このナレーションが最高にしびれる。先頭を走る馬に、やや後方から狙いを定めて勝負をかける瞬間を、短いフレーズと映像でドラマチックに伝えている。
(同期のダービー馬というのはスペシャルウィークのことで、グラスワンダーと同世代で最大のライバルという意味。CMは2012年のThe winnerシリーズの宝塚記念)

グラスワンダーはまるで競馬新聞でも読んでいるのかってくらい前評判をひっくり返す馬だったらしい。グラスワンダーはこのレース(99年の宝塚記念)で一番人気だったスペシャルウィークを抑え一着で勝利し、それは見事な差しを見せたそうだ。そんな憎めないグラスワンダーは人々の記憶に強く残った。

受験生にもたまにそういうやつがいる。順位でいえば後ろから数えた方が早かったのに、後半から徐々にスパートしだしてギリギリで志望校に合格するやつ。ほんとに指先の第一関節ぐらいまでが何とか合格ラインに引っかかったってやつ。そしてそういう成績の伸び方を見せた人ほど合格率が高い。

ちなみに競馬で勝ったことは一度もない。