ソフトバンクあれば通信障害あり

ソフトバンクの通信障害で大規模な混乱が起きた。たまたま関係なく過ごせた人はいいが当事者になった人にとっては大問題である。障害が起きなければ怒られる必要のなかった人がどこかでしこたま怒鳴られているかもしれない。あるいは悲しみに暮れているかもしれない。

ソフトバンクの回線を頼みにした様々なサービスで不具合が発生した。利用しているカーシェアリングサービスはスマホの通信を使って車の鍵を開け閉めするが、これができなくなって申し訳ないと運営会社からメールが来た。借りたいのに鍵が開かない、返したいのに鍵が閉まらない。「つながらない」という感情は人類が新たに手に入れたストレスの筆頭になった。

「機械あれば機事あり。機事あれば必ず機心あり」とは古人の言葉である。便利な機械を使えば楽になる。楽を求める心が出てくると人は道を誤ってしまう、といって頑なに便利な発明を使おうとしない老人の説話である。

老人は正しい。しかし私達は過去に戻ることはできない。アメリカが銃のない社会に戻れないように、私達はスマートフォンのない社会には戻れないのである。私達は自らの発明と付き合って行く必要がある。

AI恐怖症とでも言うべき議論がある。いつか人知を超えた機械が人間を脅かすのではないかという心理によるものだ。それこそが機心である。AI恐怖症は、AIを使って楽をしようとする心の延長線上にある。

老人は自分が発明に頼ってしまうことを知っていた。自らの力を自覚してるが故に拒んだのである。

私達はソフトバンクを拒むことはできない。ソフトバンクのない時代に戻ることもできない。八方ふさがったのなら一緒に生きていくしかない。