なんて器用なの!

中学生のとき、同級生の女の子に言われたことがある。家庭科の授業中ではなかったので手先を誉めてくれたわけではなく、人間関係や立ち振舞いに関しての言葉だと思う。皮肉のこもったネガティブな言い方だった。

言われるまでそんなつもりはなかったが世渡りがうまく見えたらしい。8人兄弟のなかで育てば誰でもそうなる。腕っぷしで勝てなければ口八丁で乗りきるしかない。

それを器用だと言われたのははじめてで、「落ち着いてほしい。君が不器用なだけだ」と言いたくなったが彼女は女子のなかでまずまずの権力者だったので私はひれ伏した。面と向かって言われたことがショックだったのもある。

それから女性と話すのが怖くなった時期がある。コミュニケーションとは奥深いもので口先だけではほんとうの付き合いはできないのだと知った。いまも女性とうまく付き合えるわけではないが、中学生のときよりはましになった。

いまなら彼女と落ち着いて話し合えるかもしれない。